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研究情報

公的な種苗生産機関におけるワムシの入手と利用タイプの現状(2011年)
(資源生産部 初期餌料グループ 小磯 雅彦)

 シオミズツボワムシ(以下ワムシ:写真1~3)は、海産魚がふ化して最初に食べる動物プランクトンとして利用されることから、国内のほとんどの海産魚の種苗(稚魚)生産機関で大量培養が行われています。
 従来は機関ごとに年間を通じてワムシを小型容器で維持する培養 が行われていましたが、近年は種苗生産前に他機関から種ワムシを入手して拡大培養を行う事例が増えつつあります。
 また、種苗生産に用いられるワムシのタイプは、形態的な特徴から、SS型、S型、L型の3タイプ(写真1)に大別されますが、種苗生産対象種の多様化により、複数のタイプのワムシが利用されるようになりました。
 このような中、公的機関におけるワムシの入手と利用タイプの現状を把握するために、平成23年6月~7月にかけて都道府県 ならびに水産総合研究センターの合計67の種苗生産機関を対象として、メール及び電話で聞き取り調査を行いました。その結果の概要について、2006年度の調査結果1)と比較して報告します。

SS型ワムシタイ株

SS型ワムシタイ株

S型ワムシ八重山株

S型ワムシ八重山株

L型ワムシ奄美株

L型ワムシ奄美株

写真1.国内の種苗生産機関で利用されているワムシの3タイプ
超小型タイプがSS型、小型タイプがS型、大型タイプがL型と総称されている

ワムシの周年維持培養の有無

 従来ワムシは、各機関で周年維持培養することが一般的でした。しかしこのワムシの周年維持培養は、小規模ではあるものの給餌や植え替え作業等が必要で労力と経費を要すること、さらに近年ワムシの輸送技術が発展したことにより、行う機関が少なくなってきています。
 2006年の調査では、周年維持培養の「有り」が54%で、「無し」が46%でした。今回の結果でも「有り」が50.7%で、「無し」が49.3%と、ほぼ半数の機関はワムシを周年維持培養しておらず、種苗生産開始直前に入手していることが分かりました。(図1)。

図1 ワムシの周年維持培養の有無

図1.ワムシの周年維持培養の有無(調査機関数=67)


周年維持培養を行っていない機関のワムシの入手先

 ワムシを周年維持培養していない機関は、種苗生産開始前にワムシをどこからか入手しなければなりません。
 2006年度の調査では、「水研センター能登島庁舎」からワムシを入手した機関が60.0%、「販売業者」が24.0%、「近隣の種苗生産機関」が16.0%でした。
 今回の結果でも、「水研センター能登島庁舎」が54.9%と半数以上を占め、「販売業者」が19.6%、「近隣の種苗生産機関」が25.5%でした。各機関のワムシの入手に水研センター能登島庁舎が大きく貢献していることが再確認されました(図2)。

図2 維持培養を行っていない33機関のワムシ株入手先

図2.維持培養を行っていない33機関のワムシ株(51株)の入手先

各機関で主に利用しているワムシのタイプ

 種苗生産機関で利用されているワムシのタイプは、種苗生産対象種や培養設備並びに立地条件等に応じて異なります。2006年度の調査では、「S型のみ(SS型を含む)」が48.0%、「S型とL型の併用」が23.0%、「L型のみ」が29.0%でした。
 今回の結果では、「SS型とS型」、「S型のみ」の合計が53.7%、「S型とL型の併用」が23.9%、「L型のみ」が22.4%となり、SS型並びにS型の利用率がやや高くなりました(図3)。近年、ハタ類やカワハギ等の新たな魚種の種苗生産が試みられており、その種苗生産に不可欠な超小型のSS型ワムシの需要が増加したためと推測されます。

図3 主に利用しているワムシのタイプ

図3.主に利用しているワムシのタイプ(調査機関数=67)

 今回の調査結果は2006年度に比べて大幅な変化はありませんでしたが、利用ワムシのタイプに若干の変化が認められました。前述したようにワムシの周年維持培養をやめて種苗生産前に入手して大量培養を行う方法は、2006年度に続き、今回の調査結果も約半数の機関で実施されていましたが、ワムシ培養に係る労力とさらなる経費の削減という観点から今後ワムシの周年維持培養が減る可能性があります。
 ワムシ培養に関する研究を進めるにあたり、種苗生産現場におけるワムシ培養の現状を把握することは重要であるため、今後も数年ごとにこのような調査を実施して公表していきたいと思います。最後になりましたが、今回の調査に協力していただいたワムシ培養担当者の皆様に感謝いたします。

(参考文献)
1)小磯雅彦(2007)ワムシ培養に関するアンケート調査結果(2006年度).栽培技研、35、63-71.